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アルミ熱処理の強制空冷について

2014.09.25
アルミ熱処理の強制空冷について

アルミニウムの溶体化処理は、特に指定がない限り水冷になります。水槽に入れた水の中に製品を直接入れて冷やします。

また、T5処理などの場合は「空冷」や「放冷」と呼びますが、炉から出してそのまま放置して冷却をします。

急いで出荷するときなどは、T5や焼鈍の場合には扇風機で風を送って冷却をする場合もあります。

それらとは別に、強い風を送って冷却のスピードを上げることを「強制空冷」と呼んでいます。

このノウハウを持っている熱処理業者は少ないようで、自動車メーカー数社などから試作を含めた依頼を受けたりしています。

普通の扇風機で風を送っても風量が無いために冷却効果は期待できません。

弊社の場合は、T6の冷却を水の代わりに風を使って行う製品もあります。冷却スピードは水に比べて落ちるために硬さはでにくいのですが、変形が少なくなります。

風による冷却方法は、色々と試してきていますがけっこう難しいところがあります。水を霧状に吹くミストと一緒に冷却をしたこともありますが、風を大量に送った方が冷却効果は高くなります。

いずれにせよ、製品によって色々な違いがありますので最初からうまくいかないという場合もありますが、空冷によって解決される問題も多くあります。

もし現在の製品の熱処理で何かお困りのことがございましたら、遠慮なくご相談のご連絡をしていただければと思います。

2014.09.18
電気炉の温度の制御方法について

弊社のアルミニウムの熱処理炉は電気炉を使用しています。

ヒーターに電気を通して発熱させて加熱をするのですが、その制御方法にはサイリスタを使用しています。

昔の電気炉は、ONとOFFの制御方式でした。

ONとOFFの動作は、例えば炉内の温度設定が500℃の場合、500℃に達した時にヒーターがOFFになります。

通常は、500℃でヒーターが切れてもそのまま昇温するため、502~505℃ぐらいまで上昇した後に冷めてきます。そして、炉内の温度が500℃を下回ったときに再びヒーターがONになります。

このため、500℃で保持するときには、だいたい495~505℃ぐらいの温度範囲ですが、温度記録計を見るとONとOFFを繰り返すためにギザギザになっています。

それに対して、サイリスタでの制御は、500℃に近づくにつれてヒーターの出力が弱まり、だいたい50%ぐらいになって500℃を超えないように調整されます。そして、その後もヒーターの出力をコントロールしながら保持をするため、499~501℃ぐらいの範囲で保持されます。

また、加熱してから保持に入るときに一旦温度が設定温度を大きく超えて戻る、いわゆるオーバーシュートと呼ばれる現象もなくなります。

ただ、実体(実態)温度で見ると、それほど細かな上下の温度変動はありませんので、どちらの制御方法でもだいたい品質は保たれます。

1番の問題点は加熱から保持に入るときのオーバーシュートのときに、ON・OFF制御だと一瞬ですが雰囲気温度が設定温度よりも高くなるため、製品への影響も多少あるかもしれないということです。あまり気にならない範囲だと思いますが。

そして、加熱するときの時間ですが、あまり早くても炉内の空気ばかりが暖まって製品の温度とずれが出ますので、だいたい1時間半から2時間ぐらいで保持に入るような加熱時間が良好なデータが出ますので、それを狙うにもサイリスタ制御が最適なものとなります。

2014.09.11
熱処理炉の保温材について

弊社で使用しているアルミニウム用の熱処理炉の保温材はセラミックファイバーを使っています。

昔は耐熱レンガを使うことが一般的でしたが、最近はセラミックファイバーを使用した炉を使うメーカーも増えています。

レンガの炉の場合は、加熱するときに時間はかかるものの、放熱しにくいために連続で熱処理を行う場合には冷めにくいために便利です。

しかし、冷めにくいという特性があるために温度のコントロールがやりにくくなります。

例えば、100℃に加熱するときに、炉の中が100℃に達した時点でヒーターを切っても、さらに温度が上昇し続けます。そして、100℃を超えた状態から温度が下がりにくいために、それが長く続いてしまいます。

その点、セラミックファイバーの断熱材は、適度に放熱するために温度のコントロールがやりやすいという特徴があります。

決まった温度に到達してから、±5℃で保持を続けるときなどは、セラミックファイバー製の炉で電気の出力をコントロールしながら行うと、よりよい状態で熱処理を行うことができます。

弊社の炉は、床面は耐火レンガで側面はセラミックファイバーを使用しているため、温度のコントロールも良好になっています。

2014.09.04
雰囲気温度と実体(実態)温度について

アルミニウムの熱処理は、弊社では熱源は電気を使用しています。電気を使って加熱をすると温度をコントロールしやすいという利点があります。

そして、炉内に温度を測定するためのセンサーを取り付けています。これは熱電対(ねつでんつい)と呼ばれていて、ステンレスの細い管の中に熱電対の素線が入っています。

通常は、このセンサーで測定された温度を元に炉内をコントロールしています。

ここで問題となるのが、炉の中に入れた製品の温度と炉内の温度との差です。

炉内の温度は雰囲気温度と呼んでいます。雰囲気は、炉内の気体を指すこともあり、窒素雰囲気や水素雰囲気と言った場合には、それらの気体で炉の中が満たされている状態です。

さて、例えば炉の中の雰囲気温度が500℃の状態でも、製品の温度は500℃に達していないことがあります。

お湯の中に何か缶コーヒーなどを入れても、すぐにお湯と同じ温度にならないように、周囲の温度と同じになるには時間がかかります。

電気炉の温度管理(制御)は雰囲気の温度で行っていますので、実際の製品の温度とは異なっています。

そのため、実際に製品の温度を測定するためにセンサー(熱電対)を直接製品に取り付けて測定することを実体(実態)測定と呼んでいます。

たとえば、合計で1トンぐらいの製品を電気炉の中に入れた場合に、炉の温度が500℃に達しても製品の温度は400℃に到達していなかったりします。

また、炉内の上下でも温度に差が出ます。

この温度差は時間と共に解消され、だいたい1~3時間後には雰囲気温度や炉内の製品の上下も同じ温度に到達します。

熱処理の工程を決めるときに、保持時間については実体(実態)測定の結果を考慮しながら雰囲気温度で管理できるようにしていきます。

炉の中に入れる量や並べ方でも色々と変化しますので、それらのノウハウを元に最適な熱処理を行っております。